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【日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会】「産婦人科医の確保に向けた地域枠学生の卒後臨床研修に対する提言」   2016/12/12 up!

【概要】
平成28年12月12日
都道府県知事 各位

「産婦人科医の確保に向けた地域枠学生の卒後臨床研修に対する提言」

公益社団法人日本産科婦人科学会 理事長 藤井 知行
公益社団法人日本産婦人科医会 会長 木下 勝之

 都道府県は産婦人科医師の不足による地域産婦人科医療の危機的状況を打開するため、以下の施策を推進すること。
1. 地域枠の医学生が卒後初期臨床研修を行う場合、産婦人科を必修科とする。
2. へき地医療等への従事を義務とした地域枠の医学生についても、産婦人科専攻の選択を可能とする。

 地域医療を担う医師の確保は、重大な政策課題となっており、医師の地域偏在、診療科間偏在を打開するための施策の一つとして、全国の医学部では地域枠が設けられています。地域枠には様々な制度がありますが、その全体としての募集人数は年々増加しており、医学部定員の15%以上を占めるに至っています。今後地域医療提供体制の確保に大きな役割を果たすことが期待されるわけですが、産婦人科、小児科等の医師不足の診療科の医師確保にもこの制度が有効に機能することが望まれます。しかし、各地域におけるその実情については、地域枠の制度やその運用が都道府県ごとに異なっていること、この制度による卒業生で、診療現場に出ている人数が少ないこと等のため、情報が限られており、十分明らかになっているとは言えないのが実情です。そこで日本産科婦人科学会医療改革委員会では、各大学医学部を対象としてそれぞれの地域枠制度と産婦人科医確保との関係について調査を行いました。その結果、いくつかの県・大学では、地域枠制度を活用して将来の産婦人科医確保のための施策が始まっていることがわかりました。しかし、その数はきわめて限定的であり、特に産婦人科専攻医が人口比で少ない地域においては、より積極的な制度運用が必要と考えられました。

この提言は以上のような検討を経て、地域枠制度を運用している都道府県に対して行うものです。今後、地域枠の卒業生は急速に増加していきます。迅速なご検討と施策の実行をお願いいたします。

第一に、産婦人科は初期臨床研修の中では選択必修の診療科となっていますが、地域枠の研修医については必修科として必ず選択するように誘導していただきたいと考えます。その理由は、地域枠学生には将来の産婦人科専攻を検討するための機会を提供する必要があると考えるからです。地域枠学生の将来の進路としては、全体としてはへき地医療、在宅医療、総合診療等の占める割合が高くなると考えられ、そのための教育研修の機会を提供する必要がありますが、同時にそれぞれの地域の実情に応じて、不足している診療分野を専攻する途も示していく必要があります。初期臨床研修の段階で産婦人科を経験することで、研修医は自分の産婦人科専攻に関する適性を判断する機会を持つことができます。将来産婦人科を専攻しない場合でも、産婦人科という診療領域はプライマリケア診療に従事する上で研修が必要な領域であり、初期臨床研修の段階で研修しておくことは本人にとって有益な経験となります。
第二に、地域枠制度では、義務年限において勤務地として特定の医療機関が指定されることが多いのですが、指定医療機関では産婦人科専門医研修が困難で、実質的に産婦人科専攻が難しくなっている現状があります。産婦人科医が不足している地域では、地域枠の専攻医が、県内の分娩を取り扱う医療機関で産婦人科医師として勤務する場合には償還期間として算定できるようにしていただく等の対策を講じて、産婦人科を専攻する上での制度的なハードルを取り除いていただきたいと考えます。具体的方策につきましては、既にいくつかの県で参考となる先行事例があること【(参考)1.参照】を申し添えます。
以上

(参考)
1. 各県における地域枠を活用した産婦人科専攻医確保のための方策の実例
(ア) 和歌山県では、僻地医療への従事を義務付けられた和歌山県立医科大学の地域医療枠の医学生の卒業後の進路として、『特定の地域の』病院であれば、産婦人科専攻医として勤務することが可能となった。
(イ) 高知県では産婦人科、小児科、麻酔科、脳神経外科を選択した場合には、奨学金が増額になる措置が行われており、さらに平成26年に高知県内の研修システムにおいて償還制度の見直しが行われ、県内の分娩を取り扱う医療機関での研修であれば償還期間として算定できることとなった。
(ウ) 栃木県では、自治医科大学の「栃木県出身者(3名)」の枠について、「産婦人科は僻地」という概念で、産婦人科希望者は地域での勤務期間軽減が行われている。
(エ) 福島県では、産婦人科の集約化の進行により、地域枠(僻地枠)を選択した場合、地域枠の対象となる病院には産婦人科という診療科がないため、産婦人科医としての研修先・勤務先となる病院がない状態だった。平成26年度より県内の病院の産婦人科で研修・勤務すれば、地域枠対象施設で勤務したのと同等の扱いとすることになった。(自治医大出身者も同様)
(オ) 神奈川県の聖マリアンナ医科大学では、静岡県の地域枠学生が産婦人科専攻を希望した場合、静岡県と同県の産婦人科専攻医指導施設と調整を行い、産婦人科専攻医として勤務可能となった。
2. 産婦人科の現状について
(ア) 日本産婦人科医会の平成28年の調査で、全国の医療機関及び分娩取扱施設に勤務する産婦人科医師の総数が前年度に比較して減少したことが明らかになった。 
 http://www.jaog.or.jp/all/102_161012.pdf
(イ) 全国で90万件の分娩に対応可能な体制を確保するために最低限必要な新規産婦人科医は年間500名以上と試算されている(別添資料)。
(ウ) 新規産婦人科専攻医数は、将来にわたって地域分娩環境を確保するために最低限必要と考えられる水準に全く到達していない上に、2010年度の491名以降、減少傾向が続いている(図1)。
(エ) 都道府県間の人口あたりの新規産婦人科医数には大きな格差が存在している(図2)。
  • 2016-12-12 地域枠学生提言最終版.pdf
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